FUNAI RACING POST

TOKYO HARD ENDURO VIBES

IRC VE33s GEKKOTA インプレッション 他社タイヤとの比較など

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Summary
  • IRCの新作ガミータイヤVE33s GEKKOTAをインプレッション
  • よくある路面ごとの使用感
  • 他社のガミータイヤとの比較

話題のVE33s GEKKOTAをインプレッション

糸魚川で行われたFun Ride Festivalにて、音速の申し込みが功を奏したのか、運良くVE33s GEKKOTAのモニターキャンペーンに当選しました。

応募条件にもあった、"SNS等での感想の発信"という項目を本稿で充てたいと思います。

今回私が初めてVE33s GEKKOTAを履いた以前に、春からVE33s GEKKOTAを履いている人間がチーム内にいるので、その長期的なインプレッションも同時に行えたらと思います。

このタイヤに関してはすでに多くの人がインプレッションを寄せていて、もうすでに大体のことは周知されてきている、と思っています。

なので、今回は特にハードエンデューロ的な走行に絞ったインプレッションと、スポンサードを受けているライダーや、メーカー発のインプレッションではあまり言及されない他社タイヤとも比べての使用感にも言及したいと思います。

本稿は完全に素人のアマチュアライダーが行ったものです。当然、タイヤの性能をしっかりと理解可能な走りができている保証はどこにもないので、いちユーザーのいち意見として読んで頂けると幸いです。

VE33s GEKKOTAの基本情報

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VE33s GEKKOTAはIRCが満を持して発表した、新進気鋭のガミータイヤです。

これまでIRCにはiX-09W GEKKOTAというガミータイヤが君臨しており、ガミータイヤの草分け的存在として多くのライダーに親しまれてきたと思います。

私もその中の一人で、2本あるホイールのどちらかには必ず09GEKKOTAを履いており、年間を通じてリピートしているタイヤでもあります。

発売当初は、かなり局地戦闘機的なタイヤであったと聞きますが、数回のアップデートを重ね、今の09GEKKOTAになっています。

そんな09GEKKOTAの弱い部分を解消し、ハードエンデューロでの使用に際してもっとオールマイティに適応させたのがこのVE33s GEKKOTAであるという触れ込みです。

箇条書きにすると、

  • 09GEKKOTAが持っていた岩、根っこ等の走破性をそのままに
  • 09GEKKOTAが苦手としていたマディや軟質系路面での走破力を高め
  • サイドが柔らか為にたわんでしまう09GEKKOTAよりもハイスビードでの操作性に優れる

ようなオールマイティハードエンデューロタイヤということでしょうか。

外観と触感

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パターンはVE33と基本は同じでしょうか。サイドのパターンが少し違うような…?

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ブロック高はVE33同様、高めです。

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ブロックを捻ってみた感じは結構硬いです。写真では割と力入れて捻っています。VE33よりは若干柔らかいか…?と思いますが、VE33もこんな感じだったかも。と思える位の硬さ。09GEKKOTAや他のガミータイヤに比べると確実に硬いと感じます。

ブロックの硬さは、
[硬] VE33s GEKKOTA > AT81EX > 540DC ≒ iX-09W GEKKOTA [柔] という印象です。

サイドの剛性は
[高] 540DC > VE33s GEKKOTA > AT81EX >> iX-09W GEKKOTA [低] と感じました。

走行インプレッション

走行中にタイヤのことを考えるのは大体想定通りの動きができずに失敗した時が多いです。個人的には。例えば、岩・根っこで滑った、マディで排土性が悪い、進まない、キャンバーで踏ん張れない、ハイスピードでヨレる、ラインがズレる、等です。

VE33s-GEKKOTAはこういうアクシデント的なネガティブ状態を受けることが非常に少ないタイヤである、という印象を受けました。後から考えてみたらタイヤで特に困ることはなかった。それよりも他の部分で〜というような感想を持つタイヤです。

当然これはタイヤが優秀であり、タイヤとしての機能を十分に果たしていることが起因しているわけですが、それではインプレッションにならないので、走行シチュエーションごとに分けていきたいと思います。

ロックのみのガレ

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要は白井のガレ沢(本線)です。

我々が足繁く通う白井のガレ沢ですが、基本的に下の土部分が見えていることは少なく、大小からなる岩の上を進んでいくような場所です。他タイヤとの比較は詳しく後述しますが、09GEKKOTAには及ばないものの、やはり無印VE33等と比べるとしっかりガミータイヤ然としたグリップをする印象です。

特に白井の沢を往復するといった奇特な使い方をしない限り、特に国内のハードエンデューロレースの中での沢セクションはどこも限定的なので、必要十分な性能であるという印象を受けました。

拳大の岩が多い、動くガレ

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ちょうど糸魚川のようなゴロゴロとした石が転がっているような場所です。これしかそれっぽい写真がなかったのでご容赦頂きたいですが…めっちゃフラットや…

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と思ったらそれっぽいのがありました。こんな感じですね。

このような路面の場合にはどちらかというとアクセルワークの方が大きく影響すると思うので、タイヤとしてどうこうという感じでもないような気がするのですが、、。例えば雨が降って全体的にマディ気味になった場合などを考えると、09GEKKOTAよりも33sを選んでおく、という考え方もできるかもしれません。

例えば糸魚川の場合はこういった路面でかつハイスピードなレースを行うことになるので、スピードを出した時の安定感が高い33sに適していると思いました。

濡れた岩、川の遡上

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白井の沢・支線の場合などです。

これもかなり限定的なユースケースなのでわざわざ取り上げるのもどうかと思いますが、水が絶えず流れており、岩が濡れ苔がむしているような状況を指しています。

これも前述の沢のように09GEKKOTAには及ばないものの、無印VE33に比べると遙かにグリップします。コンパウンドが良いのか、濡れた岩、濡れた木でも、少しでも勢いがあれば難なく進んでいける感じです。

陰湿な根っこ

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ヒルクライム中などに現れるかなり陰湿な根っこなどです。

ヒルクライム中の根っこは、言わばレースで前に進めるか否か、即ち周回できるのかどうかを左右するほどの重要なファクターです。

今までのタイヤ選びでも、マディでの安定制を取るのか(超低圧VE33)、ヒルクライム中の根っこ対策をすべきなのか(ガミータイヤ)といった、タイヤ選びでの重大要因であったことは否めません。

これもドライなら09GEKKOTAに軍配が上がるものの、他のガミータイヤと同等のグリップがあると感じました。
また、登りで地面が濡れている場合などは、やはり09GEKKOTAよりも優位性があると思います。

カフカ腐葉土

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日本のハードエンデューロレースでよくみかける路面です。ドライの時はいいのですが、濡れてくるとタイヤに重くまとわりつく印象です。
今までこのような路面で濡れてくると09GEKKOTAでは結構走りにくいシチュエーションがありました。ブロック高く硬めの33sが優勢になる路面だと思います。

また、だいたいキャンバーを走らせる箇所はこのような路面が多い印象です。 33sはサイドの剛性が高いのでこのような路面のキャンバーでもしっかりと踏ん張りが効く場面がありました。同じくサイドが固い540DCと比べても遜色ない印象です。

沼のようなマディ

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結構どうしようもない感じのアレです。谷地になっているだけなら、ミスらずに通過すれば良いだけなのですが、糸魚川の地獄巡礼ツアーで使ったV字谷は水が流れ込んでヌチャヌチャの沼になっており、なおかつ急勾配の登りなので本当に最悪でした。

今まで09GEKKOTAやAT81EXでこういうシチュエーションに出くわすと本当に嫌だったのですが、33sは思っていた以上にグリップしてビックリしました。当然、基本的には滑りまくってるのですが、一度グリップし始めたあとの”進んでいく感”が今までになかった感じがしました。

勝沼的カチヌルマディ

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"雨が降ったら何履いても終わり"と言われる、最悪の勝沼マディです。

グルグルウッズの腐葉土みたいになっている箇所はまだ良いのですが、通常コースの多数を占めるような、「表面はヌルッヌルだけどカッチカチ」というよく分からない路面です。気付いた時にはフロントから盛大にすっ転んでいたり、いきなり180°ターンしてる思い出しかありません。

特に写真の場合は更に表面に落ち葉が積もって隠れている石やチュルポイントが分からず、本当に嫌な路面です。

勝沼と似たようなチュルチュルのカチカチ路面を09GEKKOTAと33sでヒルクライム対決したことがありますが、まあどちらも最悪なのですが、結果としては33sのが前に進んでいました。

走行以外の部分での印象

タイヤ交換時

タイヤ交換のやりやすさはそれなりです。無印のVE33と同様でしょうか。嵌めにくい、ビードが上がりにくいということもないと思います。

異次元のライフ

33s GEKKOTAにおいて一番驚くのがそのライフの長さです。ハードエンデューロの1レースくらいでは角もそれほど減らず、もう一回新品としてレースに出ても問題ないほどの減りにくさを誇っていると思います。

タイヤも中々高価な消耗品なので、ライフの長さは大きなアドバンテージであると思います。

また、摩耗してきても従来の09GEKKOTAと同様に、大幅なグリップの低下を感じにくいという特徴もあります。

他タイヤとの比較

IRC iX-09W GEKKOTA

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従来の09GEKKOTAとの比較です。

やはりガレや根っこの走破性という面では09GEKKOTAに軍配が上がる印象でした。

09GEKKOTAの濡れた岩盤でのグリップや、例えラフな操作をしても、根っこ等を包み込むようにグリップし、なんなく否してしまう感じは、特出しているものであると感じます。

しかし、マディ気味になってくると、09GEKKOTAはキツくなってくる側面もあります。

完全なマディでなくとも、中途半端に濡れている状態であったり、雨が降らなくとも霜溶けによって時間帯によってはグチャっとする冬場など、09GEKKOTAで不安を感じるシチュエーションなどは33sを選択するのが安心であると思いました。

また、09GEKKOTAはサイドを含めタイヤ剛性自体が低いことが特徴として挙げられます。ブロックだけでなく、タイヤ全体が柔らかい特徴を活かして、面でグリップするような感触がありますが、その独特のたわみ方が苦手だという声もよく聞きます。

特にハイスピード走行をする際はやはりタイヤ剛性が足りず、腰砕けになるシチュエーションもあると思います。

33sはそのあたりの問題をクリアしつつ、ガミータイヤとしての難所でのグリップを両立している印象がありました。

ライフに関して言うと、09GEKKOTAはブロック自体の消耗は早いですが、その面で包み込むようなグリップ特性のためか、逆履きを繰り替えして、もはやブロックが”イボ”状態になっても、練習では問題なく使える程の不思議な耐久性があります。(雨の日は除く)が、それをレースで使うほどの勇気は中々出ません。

33sの方はそもそもブロックの摩耗自体が少なく、09GEKKOTA比でいうと考えられないほど見た目的には長持ちしている感じがあります。レースでの使用も含めたライフという観点では33sに軍配が上がるでしょう。

タイヤ交換のし易さでは、09GEKKOTAの圧勝です。非常に柔らかいため、70%くらいはレバーなしで入れられます。

09GEKKOTAは私が個人的に好きなタイヤであり、普段走る白井では最高なタイヤであると思っているので、これからも使用を続けると思いますが、CGCや日野ハード、CROSS MISSIONといったハードエンデューロレースに参戦するにあたって、33sはとりあえずこれを履いていたら間違いはない、というタイヤであると思いました。

DUNLOP AT81EX

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AT81EXも個人的によく使用していたタイヤです。ヤマハ車の標準タイヤとしても採用されているAT81のガミータイヤバーションという位置づけです。

使用シチュエーションとしては、軟質・粘土系の路面等、天候やコンディションによっては09GEKKOTAだと不安がある場合に選択していました。

こちらも岩盤や根っこ等の走破性は09GEKKOTAには及びませんが、マディでの使用感は09GEKKOTAより優れており、非常にバランスが良い優等生なイメージです。

そういった意味では、33sとカバーする範囲が近いライバルタイヤと言えるかもしれません。

33sとの比較ですと、どちらもあらゆる路面に対してオールマイティに使える特徴はあるものの、軟質系の路面に関しては、33sの方がブロックが高く・硬い分、刺さってくれる印象がありました。

また、ライフの面で言うと、こちらも33sに軍配が上がります。単に摩耗する速さを比べてもそうなのですが、AT81EXはある程度使って角が消えてくると本来持っている性能が急に低下するような印象がありました。同じ時間を走行したAT81EXと33sで走った場合、 33sの方があらゆる路面に対してグリップが継続するような印象を受けています。

タイヤ交換のし易さはAT81EXの方が若干やりやすいかと思います。が、ほとんど好みの問題です。

たまに安く売っていたりするのでお財布的な事情からも今後のお世話になるタイヤかと思いますが、AT81EXを選択するか33sを選択するかは迷いどころになる候補かと思います。

SHINKO R540DC

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SHINKOの540DCです。 540Xというソフトコンパウンド"X-COMPOUND"のみを使用したガミータイヤもありますが、センターとサイドで2つのコンパウンドを組み合わせてある540DCは、ヒルクライムキャンバーでの強さからハードエンデューロで人気があるため、今回はこちらを比較対象とします。

540DCの一番の特徴はセンターとサイドで全く硬さの違うコンパウンドを使用しているデュアル構造です。

センター部分はX-COMPOUNDを使用し、サイド部分は無印540のコンパウンドを使用しています。

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センター部分は09GEKKOTAと同様なほど柔らかく、サイド部分は通常のエンデューロタイヤほど硬いです。この特徴的な構造のため、根っこ等はセンター部分のX-COMPOUNDで否し、サイドウォール自体の剛性と、ブロックの硬さでキャンバー路面や、ハイスピードでの使用感を上げている、という構造になります。

33sとの比較ですが、根っこ等に対する性能としては同等に感じされました。

岩に関しては個人的には33sのが優れていると感じました。というのも、540DCは非常に特徴的なブロックパターンをしており、ブロック間の距離が長いです。大小様々な岩の上を走っていると、ブロックの間に障害物が入ってしまうのか、不意にリアを滑らせたり振られてしまうような挙動を感じました。

また、全体のタイヤ剛性に対してセンターのX-COMPOUNDが柔らかすぎるのか、白井などを走っていると一日でブロックがズタズタに削れたり、千切れてしまうことがありました。

逆に、ブロック間が広い特徴的なパターンが排土性に優れているのか、マディでの安定感は33sより勝る印象があります。また、デュアルコンパウンドの本領であるサイド部の硬さから、キャンバーでの踏ん張りも良いです。

タイヤ自体の剛性の高さから、超低圧での運用が可能であり、0,2より下が推奨と聞きました。TUBLISSとの相性が良い点もこのタイヤの良いところだと思います。

33s比較での総評としては、コース全体が腐葉土的な路面であり、且つガレが少なく、マディコンディションが心配される場合に540DCの優位性が出てくると思います。ガレを含め様々な路面が存在するような場合は33sの方が安心して選択できる印象です。

サイド部分の剛性が高いため、ガミータイヤの中ではタイヤ交換が大変な部類です。

まとめ

以上、長々と個人的な感想を書いてきました。

VE33s GEKKOTAについてまとめるならば、ハードエンデューロレースにおいて選択すべきベンチマークが突如出現した。というのが率直な感想です。

今まで、ハードエンデューロレースでガミータイヤを選択する上では、岩や根っこに強い柔らかいブロック VS マディ耐性 いう判断軸が私の周りでは多かったように思います。

完全ドライなら09GEKKOTAで行きたいけど場所によっては濡れてるぽいからEXにした。

普通にマディっぽいけど、ガレと根っこで引っかかりたくないからガミーにするかVE33超低圧にするか迷う

こういったタイヤチョイスに迷うシチュエーションで、とりあえず33s履いてるなら大丈夫そうという選択肢ができたのはガミータイヤ市場を大きく変化させたという印象です。

技術・体力ももちろんですが、レースにおけるタイヤ選択も結果を左右する重要な戦略の一つであり、モータースポーツの醍醐味だと思います。

"33sの登場でタイヤチョイスに迷うことがなくなった"という声も周りでよく聞きますが、個人的にはより一層、大好きな09GEKKOTAとの使い所に悩みそうです。(笑)選択肢が増えて活性化したガミータイヤ市場でこれからもタイヤチョイスに迷っていきたいと思います。