【KTM EXC / Husqvarna TE】2stモデルのセルスターター清掃
Summary
- 外付けセルタイプにおける清掃の重要性
- セルスターターの清掃の仕方を紹介
- 清掃時に使うモノなど
セルスターターの清掃、してますか?
KTMとHusqvarnaのエンデュランサーは2stモデルでもセルスターターがついています。
が、2016年までのモデルでは、ジェネレーターカバーの上に外付けのセルユニットがついている形であり、これが場所的にもどうしても砂や泥、洗車時の水等の影響を受けてしまう位置にあります。
17以降のモデルは、新設計によりエンジンケース下の位置にセルモーター自体が移動したので、メンテナンス不足による不具合に敏感にならなくても良いかもしれません。
16までのモデルの場合は、定期的に清掃しておかないと以下の不具合が生じる可能性があります。
- ゴミの混入等で動きが悪くなり、セルが空回りすることが多くなる
- 軸受部のグリスがなくなることでギアの回転に影響を及ぼし、ケースの破損やギアの噛み込みが起こる
この画像は仲間内のTE125のベンディックスギア(モーターの動力を受けて伸縮し、フライホイールに噛み込むギア)ですが、外れてはいけない部品が外れて、フライホイールに噛み込んでしまった時のものです。恐らくですが、軸受部のブッシュの摩耗により回転時の振れや振動が増え、ベンディックスの部品が外れてしまったと思われます。この車両のブッシュ部分は完全に削れてしまっていました。
KTM / HSQの場合は、基本キックスターターもついているので、セルが潰れようと最悪問題ないですが、いざという時に使えないと結構悲しいので普段から清掃をする習慣をつけておくといいと思います。非常に簡単で、慣れれば10分ほどできるのでマメにメンテンンスすると良いです。
自分の場合は、マディのレース後など、ケース裏に泥が溜まって清掃したい場合、また、セルが若干空回りすることが散見された場合に行っています。だいたい2~3ヶ月に1回くらいでしょうか。
KTMセルスターターの構造
250&300と200&125で、ケースの大きさや形、ギアの歯数(後述)が違いますが、基本的な構造は同じです。
200EXCのパーツリストを元に説明しますが、①のモーターの動力が、③のアイドルギアを通して、②のベンディックスに伝わり、ベンディックスが伸縮しながらフライホイールのギアに噛み込むことでエンジンを始動します。
非常に簡単な構造です。
メンテナンスに必要なモノ
メンテナンスに必要なものは以下の通りです。
- ウエスやパーツクリーナーなど基本的な清掃道具
- グリス類
特段特殊なものは必要ないですが、グリス選びが結構重要なのでその部分を説明します。
なにも知らなかった頃はいつものMAXIMA ウォータープルーフグリスを取りあえず塗っていたのですが、サラサラしすぎなのかあまりこの部分には適してないなと思いました。やらないよりはマシではありますが。
とりあえず、KTM系のセルメンテで重要なのは、ブッシュ以外にはグリスを塗りすぎてはいけないということです。これは色々なところで言われているので調べたことのある人はわかると思います。
塗りすぎると、かえって動きが悪くなったり、高速で回転する部分でもあるので飛散してケース中に飛び散ってしまうこともあるからですね。
その辺を踏まえてグリスの選定をすると…
まず、以前和田ぽんさんに聞いた際は、こんな情報を頂けました。
おー、完璧なご回答。ありがとうございます。
このセットを買おうと思ったのですが、85は400g 7000円のデカいジャバラしかねえ。57は当時どこも在庫切れでこれも400gのジャバラしかねえ。。マイクロロンのスプレーは4000円。
流石はプロの選ぶ品だぜ…。
マイクロロン(Microlon) メタルトリートメントスプレー 220ml [HTRC2.1]
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となり、非常に金欠だった私は代替品の旅に出ました。
57は在庫があれば100gのもありますね。
Omega(オメガ) 57 ハブベアリング用 極圧グリス 100gチューブ [HTRC3]
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それでとりあえず純正指定のものにしてみようと思いまして、マニュアルを調べてみたら Molykote® 33というものらしい。ググってみると…
あった。白色なので初めてセル付近を開けてついてたものと同じだろう。けど1kgもいらないし、20000円。
調べれば100gのもあるみたいなんですが、4000円弱で取り寄せ品ということで更なる代替品を探すことに。
とりあえずMokykote 33のスペックを確認すると、
ということでまあこれに類似するものなら大丈夫なんだろうと探していたら…ありました。
住鉱潤滑剤 ( SUMICO ) シリコーングリース
住鉱潤滑剤 ( SUMICO ) シリコーングリース 100g 253960
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100gで約1600円。家計の味方です。
スペックを見てみると、Molykote 33と同様リチウム系シリコーングリスで、同等の性能はまあ満たしていそうです。
というわけでグリスはこれで大丈夫そうでしょう。
次にベンディックスの中におまじないで吹き付けたいマイクロロン。
おまじないは是非とも真似したい。
マイクロロンはよく名前を聞きますし、当然良いものだと思うので、買って全く損ではないと思います。
でもそれっぽいのあるかな〜と工具箱を見ていたら…
ワコーズ(WAKOS) MTL多目的防性・潤滑スプレー A334 [HTRC2.1]
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全然使ってないワコーズ メンテルーブがあった。
役割的にはまあ同様であろうと思うので、サンデーメカニックな私はいつもこの組み合わせでやっております。
メンテナンス手順
前置きが長くなりましたが、実際のメンテナンス手順です。
写真はMY16 TE125でやった時のものですが、250/300でもケースの形等が少し違うだけで、基本的に変わりません。
かなりニッチな情報ですが、MY16までの125ccにセルがついている場合は、250/300のものではなく、200EXCのものであると覚えておくといいです。
厳密にはMY14?だかのTE250は同じだったりするんですが、ややこしいので。
違いとしてはセル一式のケース形状が違うのと、ベンディックスギアの歯数が1丁だけ違ったりします。
この辺は間違えると結構面倒臭いところなので、どなたかの役にたてば幸いです。
まずはセルのケースと、ジェネレーターカバーのボルト類を外します。
フレームがガッツリ削れていたり、汚いのはご愛嬌です。
次に、セルモーターを覆っているカバーを外します。モーターさんが御開帳です。
赤で囲った箇所はセルモーターを固定しているボルトです。これも外しておきましょう。外したら少しモーターをクルッと上方向に回転させておくと、後でジェネレーターカバーを外す時に干渉しないので良いです。
マディのレース後なんかはこの部分やモーターの裏に死ぬほど泥が溜まるので洗車してからメンテナンスすることをおすすめします。清掃しないでジェネレーターカバーを開けると、縁に積もっていた泥が中に入って非常に面倒臭いことになります。
次に、右上の3箇所で留まっていた丸いカバーを外します。
一緒にモーターの動力をベンディックスに伝えるアイドルギアも取れるので、取ったら清掃しましょう。オレンジ色のブッシュの部分も清掃し、削れていないかチェックします。前回は家にグリス類を忘れて、マキシマのグリスしかなかったのですが、やはり緑色っぽくなったグリスが結構飛散してますね。
次にジェネレーターカバーを外します。
これも外したら清掃し、写真左上のベンディックスの受けになっているブッシュを清掃してチェックです。
配線まで外す必要はないので、ついたまま何かいい感じの高さの箱のようなものに置きましょう。
フライホイール側です。右上のものがベンディックスなので抜き取ります。
抜き取ったベンディックスです。
分かりづらいですが、二枚目の写真のように、回転しながら伸縮する構造になっています。モーターの動力を受けてベンディックス自体が伸び、それがフライホイールの外側の歯に噛み込む構造です。
ベンディックスも一通り汚れを落とします。
ベンディックスを外した際のケースです。右上のブッシュがある箇所が中心になりますが、ここも全体的に汚れを落とします。
ケースのブッシュ拡大写真です。
ケース側のブッシュは傷んでしまうとケース自体を削ってしまう原因にもなるので、ブッシュの消耗具合を特にチェックする必要がありそうです。
清掃が済んだら新たにグリスを塗っていきます。
モーターからの可動部、ベンディックスへと変換するアイドルギアには薄〜くグリスを塗ります。
ベンディックス自体には中の構造部に、メンテルーブを少しだけシュッとしておきます。
マニュアルには以下のように書かれています。
On the bendix, only apply grease on the bearing stud.
なので、ベンディックスのギア部にはグリスを塗布せず、ブッシュと接するベアリングのスタッド部のみにグリスを塗ります。
各ブッシュ部にもグリスを盛っておきます。
ベンディックスの両端、アイドルギアの両端にもブッシュがあるのででお忘れなく。
これで一通りのグリスアップは終わりです。
空回りし出した頃に行うと、直後から空回りせずにガッチリ回ってくれることがわかると思います。
それでも空回りする場合は、ブッシュの摩耗も考えられるので、そのような場合は替えるのが無難かと思います。
55140030100 COLLAR BUSHING
ブッシュは125&200 / 250&300問わず上記のものが共通で使われています。いくつか予備で持っておくことをおすすめします。
また、⑨のアイドルギアのワッシャは複数サイズあり、遊びが大きすぎる場合は厚さで調節するようにと書かれています。同寸法のワッシャをホムセンで買えば事足りります。
遊びの調整についてはマニュアルを抜粋しておきます。
私の場合、オイルが入っている場所でもないので、ガスケットは基本的に清掃して使い回しています。破れた時などの為に予備は持っていますが使いまわして特に問題ありません。
以上で、セル周りの清掃メンテは終わりです。慣れるとかなり簡単なのでマメにチェックすると良いと思います。