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TOKYO HARD ENDURO VIBES

田中太一さんスクールまとめ @糸魚川Fun Ride Festival

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Summary
  • 2018.8.18-19のFunFesにて行われた田中太一さんスクールのまとめ
  • 乗車姿勢の考え方
  • クラッチワーク
  • 悪路の走り方

田中太一さんスクールに参加してきた

糸魚川で行われたFun Ride Festivalにて、なんとあの伝説の田中太一さんによるスキルアップスクールがあるということで参加してきました。
スクール中は写真を撮っていなかったので基本的に文章での備忘録になります。

本稿で記載している内容はスクールの全てではなく、ごく一部の共通的なものです。したがってスクールそのものを代替できるようなものでは到底ありません。
スクール本番ではもっと詳しい内容や、個人に対してマンツーマンで詳細にアドバイスして頂けるので、興味があったら、是非対価を支払って受けてみることを強くお勧めします。

本稿の公開に際してなにか問題がありましたらご連絡をお願いします。

乗車姿勢の考え方

乗車姿勢についてご教授頂きました。今まで色々な方に教えて頂いたものと重複する部分も多々ありますが、太一さんの場合は、「なぜそうにする必要があるのか」という側面を論理的に説明してくれるところが非常に腑に落ちやすかったです。

というのも、人によって感覚や体格は違うので、画一的なフォームをただ押し付けても身につきにくい部分があり、本質的ではないということ。

ライディングの様々な状況から、「なぜそうにする必要があるか」という根幹的な部分を理解することで、基本的にはいわゆる"良いフォーム"に帰結するということでしょう。当然細かい箇所は個人の体格等によって向き不向きもあるので、論理性を理解しながら自身の感覚で理解することが重要ということでした。

永遠の課題 "Body Position"

太一さんがトライアルからオフロードに転向した際、この競技においての永遠の課題は何か?と海外ライダーに聞いたところ、”Body Position”と即答されたそうです。Body Positionによって難所の攻略、タイム、全てが変わってくると。

スタンディングの場合
  • フットレストから真っ直ぐ自然に立った場所が基本のポジションである。その際、両膝はシートの一番細いあたりにくる
  • 膝から下でしっかりとマシンをホールドする → 当然振られないようにするため
  • 猫背にならず背筋を伸ばす → ギャップでの突き上げと、マシンへのトラクションに影響する。衝撃に耐えようとする場合、力を入れる場合に人体は猫背にならない
  • ハンドルは軽く肘を張り、外側から持つ → 衝撃の吸収と、上体の姿勢を調整するため。
  • 背筋を伸ばしたまま、頭の位置でポジションを調整する。→ 頭が一番重いのでその位置で調節をする。したがって登りで前輪が浮くのを抑える場合にはそのままお辞儀をするように前傾する形になる
  • ハンドルを持ってそのまま腕立て伏せができるような形が良い
シッティングの場合
  • スタンディングの状態から少し前にスライドして座る → 初心者であると最適な場所より少し後ろに座っている場合が多い。
  • シュラウドを足でホールドする
  • スタンディング同様背筋を伸ばす
  • 腕はスタンディングと同じ
その他
  • フットレストは母子球あたり →地面に力を入れる時に一番力が入る箇所である
  • リアブレーキングの際は右足が少し前にでるポジションになるのはおかしいことではない
  • しかしギャップに差し掛かる場合等は左右同じポジションで衝撃に耐えられる姿勢を作るべき
雑感

基本的に、あらゆる路面・状況に対して正確且つ安全に走る為の姿勢であるべきというのが前提にありました。

然るべき体勢が取れていれば、タフな路面でも安全且つ怖くないので速度も上げることができる。よって安全にレベルアップしていけるとのこと。文字に起こしてみると至極当たり前ありますが、そこが中々できてなかったりするものですね。

背筋を伸ばす意味

スタンディング・シッティングに関わらず、乗車時には背筋を自然に伸ばすことが強調されていました。

よく聞く骨盤を立てる、股関節を入れるという表現と、論理的には同義であると思うので個人的な補足をしてみます。

あらゆるスポーツで言われることではありますが、人間が瞬時に反応したり、力を出したりする場合の姿勢はどのスポーツでも共通しています。

野球のバッティングや守備でも、サッカーやバスケのディフェンスでもそうですが、イメージとしては、"足を肩幅より少し大きく広げ、その状態で軽くジャンプして自然に着地し、すぐ前後左右に動き出せる姿勢"というと分かりやすいかと思います。

この姿勢は競技により、「パワーポジション」や「アスレチックポジション」などど言われていますが、あらゆる運動での基本姿勢です。

その際には、膝が軽く曲がっていて余裕があり、背筋は伸びて骨盤は立っています。股関節に関しては、ズボンのVラインに少しシワができている状態であり、自然に”入っている”状態になっています。 これはこの姿勢が一番素早く、且つ力強く動けるからであり、即ち次のアクションに対して筋肉を動かしやすい形になっています。

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この図を見るとわかりやすいですが、左の骨盤が立っていることと、右の猫背でいることは相反する状況です。日本人は骨格的に骨盤が後傾してる人が多いのですが、骨盤を後傾させる=猫背でいることの何が悪いかというと力が入らないからです。

地面を蹴って真上にジャンプする際、肩にバーを載せてスクワットをする際、絶対に背筋は伸びています。これは当然この姿勢をとらないと力が入らない為です。

バイクの場合は進み出すパワーの源泉はエンジンであり、どんな姿勢でもスロットルを回せば力が出るため、忘れがちになりそうです。

このあたりが操縦をするという動作で構成されるモータースポーツの難しいところではありますが、フットレストに荷重して地面にトラクションをかけたり、地面から伝わったギャップの衝撃に耐える為には、上記のような基本姿勢がやはり必要になります。猫背の場合は腰椎に衝撃を受けやすいので腰痛を発生させる原因にもなります。

背筋を伸ばして正しい姿勢を維持するには体幹を必要とするため、私もダラッとツーリングをしていたような感覚で、短期的に楽だから猫背になりがちです。姿勢の維持という部分でもこの競技において体幹の重要性が伺えます。

太一さんスクールでは骨盤についての言及はありませんでしたが、人体の構造上、背筋を伸ばせば自然と骨盤は正しく立つので、いわゆる骨盤を立てろ、股関節を入れろ、と同様と解釈しました。

クラッチワークについて

スクールでは斜面でブレーキをかけた状態から、ブレーキをリリースして半クラッチのみで車体をその場で維持する練習、そこからクラッチ操作のみで10cm単位でタイヤを前後に転がすような練習をしました。

エンジン音が下がって繋がりはじめる箇所からミリ単位の操作で半クラッチを調節する。太一さんの手元を見ながらの実演では、注意して見ないと全く指が動いているのか分からないレベルの繊細な操作でした。

悪路やキャンバーでの再発進等、極繊細なクラッチワークで、タイヤをゆっくり半周回してから速度を乗せていくような乗り方ができるようになるとライディングが大きく変わってくるとのことです。

一つハッとしたのは太一さんの実演ではクラッチは2本指操作であったことです。この辺も個人によって握力や指の長さ、または車両によりクラッチの重さも異なるので、必ずしも1本指でやるべき、というのは、繊細な操作という目的を考えた場合、場合によっては本質的ではないのかもしれません。

エンジンのおいしいところを使う

  • 石が動くガレ場等、グリップが悪いところは低回転のブオブオのところを有効に
  • 掻いたら(空転したら)戻してグリップを回復させる

糸魚川の様々な悪路面を使って、エンジンのおいしいところを上手く使う練習をしました。

基本的に速度が出ている時は問題はないが、キツいコーナーからほぼゼロ発進で立ち上げる際などで、且つその路面が荒れている場合、エンジンの下のドロドロの部分を上手く使って転がすように通過する練習をしました。

ドロドロ進みながら、車体が真っ直ぐになってからしっかり加速。小排気量の場合は、多少回転域は上がりますが、共通するのは悪路で空転する前の回転域を使って何事もなく通過するということでした。

全開で空転して振られながら進んでいく方法もある、が、速度的に大差ないのと、おいしいところを使って難なく通過する方がリスクが圧倒的に低いので、そういったクレバーな走りをしましょうという言葉が印象に残ってます。

路面が悪い箇所でのコーナリングだけでなく、ヒルクライム中の障害物なども、一度回転を落としつつ、惰性で否してから再加速をするように、常に路面へのトラクションを意識しながらメリハリのある走りをすることが重要であるということです。

リスクの少ないラインを取る

  • 急加速してからアクセルを戻したタイミングを上手く使う(一番進む)
  • 次のアクションに対処できる余裕を残す

登頂後がブラインドになっている短いヒルクライムなどで、助走で急加速した後、ヒル自体はアクセルを閉じた状態で惰性で登り切る練習をしました。

→ アクセルを戻しながら進んでいる時が一番エンジンのおいしい所である。登った先になにがあるか分からないので、頂上でちょうど停止するように調整する。

これも、ジャンプしても構わないが、ピッタリで登りきった後にラインを見て素早く再加速したほうがリスクが少ないからそっちを選ぶべき、ということでした。飛んでしまえば降りるまでなにもできないが、飛ばなければ何があっても対処できるということでした。

まとめ

これらのレクチャーを受けながら、おさらいにガレがキツいコーナーから高斜度のヒルを上がるセクションを何度か走りました。

基本的にスクールというと、一律で教えながら集団で走るものですが、太一さんのスクールでは例え時間がかかっても、一人ずつ走行させてエンジン音(回転域)等を含めてチェックすることを念頭にしているようでした。

なので個人に対するフィードバックが厚く、参考になる部分が多かったと思います。また、ちょっとした疑問に対してもフランクに回答してくれて良かったです。

有意義なスクールを行ってくれた田中太一さんありがとうございました。

追伸

爽やかコースの権化というべき糸魚川で完全ドライコンディションの中、なぜか水が流れ込んでヌチャヌチャになっている急坂V字谷(コース外)でじっくりイゴつかせてくれた「石戸谷蓮の地獄巡礼ツアー」も良いものでした。

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度重なる代走で蓮さんもイゴる

Fun Ride Festival、総じて楽しいイベントだったので、来年もありましたら是非参加してみることをおすすめします。